3.素数方陣(超完全魔方陣)
 ここから文体をである体に変更する。こちらのほうが性に合うのでお許しいただきたい。
 はじめにで断っておいたこともう一度断りたい。ここの方陣は素数による方陣ではない。n方陣においてnが素数のとき、私は素数方陣と呼んでいるのである。
 意外なことに、素数方陣が一番簡単に作成できる。しかもこれから述べる方法で、より制約の強い超完全魔方陣となるのである。ここでいう完全魔方陣とは、普通の魔方陣のことである。普通の魔方陣なのに、わざわざ完全という言葉を入れるのは、後に不完全魔方陣(ないしは准魔方陣)という概念を導入するので、完全という言葉を入れているのである。超という概念は、具体例を作ってから説明したい。
 素数方陣はずらし方という方法で作成することができる。5方陣を例にとって説明したい。まず1行目に12345の任意の順列(ここでは順列として12345を例にする)を作る。そしてその順列を右に2つずらすのである。
 
  




 
1 2 3 4 5
4 5 1 2 3
2 3 4 5 1
5 1 2 3 4
3 4 5 1 2


   T

 




 
 
 
  2つ右にずらすという意味は1に注目していただければ分かると思う。1は順に2つずつ右にずれている。
 
 
 次に同様に1行目に任意の順列(ここでも12345を例とする。)を作り、今度は3つ右にずらす。
  




 
1 2 3 4 5
3 4 5 1 2
5 1 2 3 4
2 3 4 5 1
4 5 1 2 3


   U

 




 
 
 TUを合成すると次の魔方陣が完成する。下の例はUを商、Tを余りとしている。縦横と対角線のところの和がすべて65になっていることを確認していただきたい。
 
  




 
1 7 13 19 25
14 20 21 2 8
22 3 9 15 16
10 11 17 23 4
18 24 5 6 12




 
 
 超という概念の説明にはいる前に、重要な注意事項を述べておきたい。1番目の表で2つずらした場合には、2番目の表では3つずらしでなければないということである。違うずらし方をしないと、2つの表は独立ではなくなってしまうからである。この例においては、独立でないどころかまったく同一の表になってしまう。1行目の順列が同じであるためである。1行目の順列を変えたとしても、独立でなくなることは容易にわかると思う。 また、1ずらしおよび4ずらし(逆1ずらし)ではいけない。
         
1 2 3 4 5
5 1 2 3 4
4 5 1 2 3
3 4 5 1 2
2 3 4 5 1




 
1 2 3 4 5
2 3 4 5 1
3 4 5 1 2
4 5 1 2 3
5 1 2 3 4




 
 
1と5のところの合計が他の合計と違ってしまうのである。合計は18でなければならないのに、それぞれ5と25になってしまうのである。したがって、合成しても対角線のところの和は65にはならないのである。下の表で確認してほしい。   
 1  7 13 19 25
10 11 17 23  4
14 20 21  2  8
18 24  5  6 12
22  3  9 15 16




 
             
しかし、縦横については合計はすべて65になっている。しかも、2つの表はずらし方が違うため、独立となっていて、1から25間での数字が1つずつ入っているのである。そこでこの魔方陣を不完全魔方陣ないしは准魔方陣と呼ぶことにする。
 
 
 さて、いよいよ超という概念の説明に入ろう。
1 7 13 19 25
14 20 21 2 8
22 3 9 15 16
10 11 17 23 4
18 24 5 6 12




 
 
1 7 13 19 25
14 20 21 2 8
22 3 9 15 16
10 11 17 23 4
18 24 5 6 12




 
 
先ほど完成させた5方陣をみてほしい。対角線の合計が65になっているだけではなく、青や赤の斜め行のところも合計が65になっているのである。その他のすべての斜め行の合計が65になっている。つまり対角線を含めたすべての斜め行の和が同じ65になっているのである。私は、この状態のとき超完全魔方陣と呼ぶのである。この超完全魔方陣の方がきわめて自然であるといえると思う。なぜなら対角線のところの斜め行だけが、特権的な位置を占める道理はないからである。(しかし、私が研究した範囲内では、超完全魔方陣は素数方陣のときのみ可能で、素数以外の奇数の方陣や偶数方陣では不可能である。ずらし法では不可能であることは簡単に証明できる。)()の部分は誤りである。偶数方陣でも超完全魔方陣は可能である。しかもずらし法で作れることがわかった。魔方陣講義第10回11回参照。ただし、魔方陣講義では一般の用語法に従って、ここで述べている超完全魔方陣を完全魔方陣としている。2004年8月3日訂正
 
 さて、ずらし法によって超完全魔方陣がどれだけ作れるか考えてみよう。




 
1 2 3 4 5
4 5 1 2 3
2 3 4 5 1
5 1 2 3 4
3 4 5 1 2


   T

 




 
 
 表Tの1行目の順列は、5!で120通りである。表2の順列同様に120通りある。ずらし方の組み合わせは2と3の1通りであるから
 120×120×1×2=28800通りである。最後の×2はA,Bの対称性から生じる。しかし、この中には合同なもの(対称移動や回転移動などによって重なるもの)が1種類について8個含まれているので、実際の種類数は、
  28800÷8=3600通り
 
一般的にはn!×n!×(ずらし方の組み合わせ)×2÷8の計算になる。だから7方陣では、
7!×7!×(4×3÷2)×2÷8=381022400通り
存在することになる。(4×3÷2)の計算は7方陣の場合ずらし方が2,3,4,5あるからである。組み合わせは4つから2つ組み合わせる場合の数で、4C2ということになる。7方陣して約4億個の超完全魔方陣が存在することになる 。11方陣になると、約1兆4千億個あることになる。  
 
 
                    


 

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