魔方陣論文を読んで 2
はじめに
以下,魔方陣論文で わたしが理解に時間がかかったところについて書いてみたい. その準備に定義を確認し,魔方陣の定義から「1から始まる自然数」の条件を除いた米(コメ)方陣の概念を導入する.
A.魔方陣関連の基礎的定義
本により異なるので,魔方陣論文の定義,用語になるべく限定する
1.魔方陣論文から
a.完全魔方陣 正方形に数字をならべた方陣squareの一種である.方陣のうち,たての列,横の行のそれぞれ数字の和および二本の対角線のそれぞれの数字の和が同一である方陣である.
同一になる和を定数(加納 敏 1980),定和(大森清美 1992)あるいは魔法和という.並んでいる数字は,1からnまでの連続する自然数である.
b.不完全魔方陣とは,対角線の和が同じではなく,たての列,横の行のそれぞれの和が等しい方陣である.
c.超完全魔方陣 魔方陣のうち,たての列,横の行のそれぞれの和および二本の対角線のそれぞれの数字の合計が同一であるだけではなく,その他の斜めの線の数字の合計も同一である魔方陣.
.
2.相互の関係
以上を整理すると,縦横だけが同じ数字となる@不完全魔方陣,対角線も同じ数字になるA完全魔方陣,さらにすべてのななめの線も同じ数字になるB超完全魔方陣ということになる.後ろに行くほど条件が増えており,当てはまる方陣の数は少なくなる.
方陣> 准魔方陣(不完全魔方陣) > 完全魔方陣 > 超完全魔方陣
3.わたしが 追加したい方陣 米(コメ)方陣について
上下左右対角線の和(コメの形の和)が等しい方陣で,入っている数字は1からはじまる 連続する自然数ではない,方陣.たとえば2からはじまる偶数のみが要素となる方陣.
例. 魔方陣をk 倍すると 米方陣となる.
魔方陣にkをたすと 米方陣となる.
n次魔方陣の異なる種類を合計すると 米方陣となる.
B.魔方陣Mに関する演算(四則計算 足し引き,かけ割り)
a M×k
完全魔方陣をk倍すると,縦横対角線の和(魔法和)は,それぞれもとの魔法和のk倍となる.数字はk,2k,3k,・・・・・nk・・・・・・n^2 ×k という等差数列 となり,縦横斜めの和が等しい状態は維持される. 幾何でいう相似に該当する.(米方陣となる)
b.M+M’ M1+M2+M3+M4+M5+・・・・・
ことなる完全魔方陣同士の同じ位置のマス同士を合計すると,縦横対角線の和は,必ず等しくなる(米方陣となる).
c.M +k ← 重要.
完全魔方陣のすべてのマスにkを加えると,縦横対角線の和は,等しいままである(米方陣となる).魔法和は 元の和+n×k である.
この演算は,魔方陣を組み合わせて大きな魔方陣を作るときに使う.
d.以上は完全魔方陣について書いたが,超完全魔方陣でも準魔方陣でも,同じことが言える.
C. 魔方陣のタネ(魔方陣種)について
1.n方陣の魔方陣の種(という名の米方陣の一種)は,n進法でn方陣(n次魔方陣 n×nの魔方陣)を構成する数を表現したものを二つに分けたもの,と考えると分かりやすい.
簡単な要約-------------------------------
魔方陣の種の考え方
n進法の一桁目と二桁目を分離する.
一桁目の数字で方陣を作り合計を同じにする.
二桁目の数字で方陣を作り合計を同じにする.
いずれも満たすならば,二桁の数字の合計は同じになる.
例外 繰り上り がある場合は、合計が同じでないものでもつくれる.
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n魔方陣の縦横斜めの数字をn進法の二桁で表現し,一桁目の数字と二桁目の数字を別な方陣に配列する.
(n進法でゼロから n×n-1 までの数字を表すと,かならず二桁であらわせる.理由.n個ごとにまとめるというのが,n進法の意味だから,0から n×n -1 までのかずは,n個のマスのセットがn個あればすべてがそのマスの中に納まる)
2. 魔法和が等しいということは,一桁目の合計が縦横斜めで等しく,かつ二桁目の合計が縦横斜めで等しい,という二つの条件をみたすことと同値(必要十分条件)であるようにおもわれるが,同値ではない.
十分条件である.
魔方陣論文からの引用---------------------------------------------------
「 縦横斜めの合計が一致する」の条件を満たさない解が存在していることが発見された。」 ← 魔方陣論文 5ページ
条件「A 縦横斜めの合計が一致する。」を満たさない、種による解の例
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魔方陣論文 5 ページ より
一般領域より広い種領域が存在していることが発見された。
縦横斜めの合計が一致することが、一般領域種の条件であったが、その条件を満たさない生産的種が存在しているのである。(商の方で一致していなくても、余りの方で、差を埋めることができる場合があるのである。)
魔方陣論文 5 ページ より
---------------------------------------------------引用 おわり
うえに書いた
魔法和が等しいということは,一桁目の合計が縦横斜めで等しく,かつ二桁目の合計が縦横斜めで等しい,という二つの条件をみたすことと同値であるようにおもわれるが,同値ではない.
について十進法で,考えよう.
13+21+35=69 である.二桁目の数字は 1.2.3で 合計6 一桁目は 3.1.5で9.
20+18+31=69 である.二桁目の数字は 2.1.3で 合計6 一桁目は 0.8.1で9.
いずれも 等しい.
つぎに 19+19+31=69の場合を考えると,
二桁目の数字は 1.1.3で 合計5
一桁目の数字は 9.9. 1で合計 19. ← 二桁になっていることに注目!
数字の合計は同じだが,二桁目の合計,一桁目の合計が 上の2例と異なる.
理由は 繰り上がりがあるからである.
二桁目の数字は 1.1.3で 合計5 に 一桁目の合計の19のうちの 1が たされて 6になる.
一桁目の数字の合計 19 から 10 が上に繰り上がるので10減って 9 となる.
その結果 一桁目の合計 6,二桁目の 合計 9 と 結果的にそろう.
おなじことが3.4.5.6.・・・・n進法でもいえる.
3.繰り上がりが起きる度合いについて
n桁の数字の足し算をするばあい,繰り上がりが全くない場合は計算が簡単である.しかし小学校以来,私たちは,足し算でも面倒な計算をやってきた.つまり10進法での足し算での繰り上がりは,よく起きる(小学校時代の自分の経験の記憶からの考察).
@ 3方陣の場合,0.1.2.の三つの数字を使う.
00.01.02. 10.11.12. 20.21.22.
一桁目の数字として 0.1.2.がそれぞれ 3個ある.
二桁目の数字として, 0.1.2.がそれぞれ 3個ある.
合計が3以上になるときに,くりあがりが起きる.
A n 進法のばあい,合計がn以上になると,繰り上りが起きる.
なぜなら n進法では 0 から n-1 の 自然数をつかい,nという数字は
使えないからである.その場合,nは10と表す.
B さて 3進法のとき すべての一桁の数字がおなじ確率で登場する とすると
3*3=9 とおりのくみあわせがあり,そのうち 1-2 2-1 2-2 のペアの和ときに3以上となるから
3/9 = 0.33333 の確率で繰り上りが起きることが分かる.
C 4進法では 4*4=16 の 組合せのうち 0〜3 をつかって
4以上となる 組合せは 3+1 3+2 3+3 2+2 2+3 1+3 で
確率は 6/16= 0.375 である.
魔方陣論文 9. より-----------------------------------------
4方陣では5248種類できる。ただし、対称変換などで合同なものが同一魔方陣に対して8個あるので、本質的に異なるものは656種類である。(このホームページを開設した直後に(99年5月中旬)、一般種よりさらに広い種領域が存在していることが分かった。縦横斜めの合計が、一致しない生産的種が存在しているのである。それまで入れると、880種類存在する。そして、880を越えることはないこと、すなわち880ですべて尽くされていることが、私の作ったプログラムによって証明された。-----------------------------------------------
上の文をよむと,880-656 すなわち 224が繰り上がりをともなう魔方陣種からできていることがわかる.
656/880= 0.745454545 224/880=0.254545455
これは 4方陣の約 1/4は、コメ方陣ではない種(縦横斜めの合計が一致する一般種ではない種)からできている、ということである。うえの 0.375とおおまかに近い値が出るかと考えたが,出なかった.
注1. 7.1.2002 次の発想を得た.
0.375の繰り上がりのある魔方陣種は,一桁目のほうの魔方陣種にしか使えない.二桁目のほうの魔法陣種とすれば,種から魔方陣を作ったときに3桁の数字になってしまうからである.
ということは,その繰り上がりをともなう魔方陣種が作ることができる魔方陣は,繰り上がりをともなわない魔方陣種の半分の魔方陣しかつくれないはずである.つまり可換な魔方陣種(一桁目にも二桁目にもつかえる種)は可換ではない魔方陣種(一桁目にしか使えない種,二桁目にはつかえない種)の2倍の魔方陣がつくれるはずである.
その値を計算すると
0.375/2= 0.1875 縦横斜めの合計が、一致しない繰り上がりがある魔方陣種の割合の半分
1-0.375=0.625 → 繰り上がりがない魔方陣種
0.1875/(0.1875+0.625)= 0.230769
→ 繰り上がりがない種 と 繰り上がりがある種の割合の半分 にしめる 繰り上がりがある種の割合の半分
となり,うえの0.254545455 に0.02異なるが近い値が出てきた.
0.02のずれは,ある魔方陣種にたいして独立なもう片方の魔法陣種がどれだけ存在するか,とういう数が,それぞれの魔方陣種のタイプによって異なるからであると推測できる.
4. 追加事項
1.*n進法であらわした二つの魔方陣種にはゼロが含まれている.二つの魔方陣種により表現される数字を十進法にするとゼロからの自然数になるので,最後の段階で,それぞれの数字に1をたす必要がある.
2.魔方陣論文では1からはじまる自然数で,魔方陣の種を作り,合成するときに二桁目に当たる方陣(商に該当する魔方陣種)の数字からは1を引き,一桁目にあたる方陣(あまり,に該当する魔方陣種)はそのまま,としている.3と実質的に同じこと*であるので,読者は自分にとって,分かりやすいほうで考えてよい.
*注.つまり 0から始まる方陣をそのまま使う3と,1から始まる方陣から1を引いて使う4は同じことであり,0から始まる方陣に最後に1をたす3と,1から始まる方陣をそのままつかう4は同じことをやっている,といえる.
5.魔方陣種の分類
a.特殊種 縦横対角線に同じ数字が出てこない方陣になっているもの.
b.非特殊種 縦横対角線に同じ数字が出てくる方陣になっているもの.
c 一般種 aとbをあわせて一般種という.
いずれも 米方陣である.
米方陣でないタネがあるので,一般種ではない 領域がある,と魔方陣論文では述べられている
魔方陣論文より 再引用 ---------------------------------------------------
縦横斜めの合計が一致することが、一般領域種の条件であったが、その条件を満たさない生産的種が存在しているのである。(商の方で一致していなくても、余りの方で、差を埋めることができる場合があるのである。)
---------------------------------------- 魔方陣論文 5 ページ より
D. 魔方陣に関するいくつかのルール
1. 縦横斜めが同じ方陣の それぞれのマスの数字をたすと 縦横斜めが同じ方陣 となる.
= 魔方陣をたすと,米方陣となる.
例1. 同じ魔方陣を 二つ たす場合. これは2を かけることと同じ.
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魔法和が15の 方陣を二つたすのだから 魔法和は30となる.
例2. 魔方陣に 要素が同じ数の方陣をたす場合
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k |
k |
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2+k |
7+k |
6+k |
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+ |
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k |
k |
= |
9+k |
5+k |
1+k |
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k |
k |
k |
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4+k |
3+k |
8+k |
kをくわえると,1〜9それぞれが kだけ増えて,k+1〜 k+9 の連続する自然数となる.
中央の方陣は縦横対角線の合計が同じ3kになっている.右の方陣の 魔法和は,15+3k
kが プラス1 あるいは マイナス1の場合 をよく使う.
n進法表記を魔方陣あるは魔方陣のタネに戻すとき
また 小さな魔方陣から大きな魔方陣をつくるときなどに使う。
例3. 同じ次数の 異なる魔方陣の二つ をたす場合. ← コメ方陣となる。
2. つぎの魔方陣を,考えてみる。
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3 |
3 |
8 |
8 |
8 |
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この方陣は縦横対角線が同じ. この方陣も縦横対角線の合計が同じ.
3次魔方陣を9つならべた方陣 3次魔方陣のそれぞれのマスを9等分して
米方陣となっている 同じ数字をいれた方陣 米方陣である.
縦横対角線が等しい.
左右は独立である。 左右の方陣をながめていると いろいろな構造が見えてくる.
たとえば 数字を並べ替えていくと 左は右になる.右は左になる.
足し算では 2+5+8+ 2+5+8+ 2+5+8=2+2+2 +5+5+5 +8+8+8 というように
順番をかえても同じである.対角線,縦横を 同様に考えてく.
3. 右の方陣から1をひいて 9 をかけると やはり 等差9 の 数列が9できる。
0.9.18.27.36.45.54.6372
それを左の方陣に 加えると 連続する自然数ができる。 →魔方陣が完成.
4. 1だけでできている方陣 →米方陣
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この方陣も縦横対角線の合計が同じ. ということは 三つをたしたり引いたりしても
縦横対角線の合計は同じということになる. いずれも コメ方陣である
演算の結果も コメ方陣である。
再掲 米方陣 = 縦横斜めが等しい方陣で,要素の数字がいくつかを問わない.
E. 小さな魔方陣から、より大きな魔方陣を作る方法
より大きな魔方陣を作る方法には二種がある.
1.掛け算的方法
← 魔方陣論文 第五節 特別偶数方陣 A4の奇数倍方陣 B4の累乗の奇数倍方陣 C 8・12・16・24方陣
二つの魔方陣を 重ねていく方法.
方針,入っている数字が連続する自然数になるように工夫する.
2.足し算的方法 偶数方陣の一般的解法. ←魔方陣論文 12節
ある魔方陣に,その周りに四角の枠を額縁を付け加えるように新たな行と列を加える方法.二重の枠をくわえるので全体では 縦横4列ずつを加えることになる.
加えるものの 行と列と対角線上のマスの数字の和を等しくすればよい.魔方陣論文では幅が二マスの枠を加えている.
この方法は4ずつ次数が増えていく.
最小の魔方陣は3で,つぎは4である.
ということは 4に4をくわえた8.12.16・・・方陣をつくれる
6方陣をつかうと,10.14.18・・方陣が作れる.
3. 1.2.ほか が示していることは何か
宇宙は地球からすべての方向に150億光年のひろがりがあると考えられている.それより遠くは光の速さより早く遠ざかっているので,光が地球に原理的にとどかない.よってその境界線を光の地平線という.天動説と同様ビッグバン理論にもとづく宇宙拡大は,地球から遠い星ほど速く遠ざかるという点で,一見地球中心主義のように見えるのが面白い.じつは宇宙のどの点から観測しても同様により遠い星ほど,より速く遠ざかっているのだが.
さて その宇宙に一辺が300億光年の巨大な方陣(1マスの一辺は10センチ)を書いたとする.そのマスは宇宙をおおう.その方陣を魔方陣にできるだろうか.宇宙で最大の魔方陣.
答え.できる. つまり 上の説明は,n方陣のnをいくら大きくしていっても,魔方陣は必ず存在するということを証明しているのである(存在するか,しないかを検証している点で化学の定性分析的証明 と比喩的にいえる).
以上
7.4.2002
7.6追加・修正
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