拡大フェルマー論文目次
余弦定理における自然数解問題(拡大ピタゴラス数問題)
序論(メニュー)
1.
t=1/2の場合
2.
t=0の場合
3.
t=−1/2の場合
4.
t≠1/2,t≠0,−1<t<1の場合
超拡大ピタゴラス数問題
1. の場合
2. の場合
方程式は自然数解をもつか。
(拡大フェルマー問題)
1 n=2の場合
@
A
B において、の両方が有理数の平方数でないのに、解をもつ条件
C は解が一つ存在するならば、解を無数にもつか。
余弦定理における自然数解について
余弦定理において、cosCが無理数であるならば、自然数解(x、y、z)が存在しないことは自明である。なぜなら、(x、y、z)が自然数であると仮定すると、
の式から、左辺は無理数で右辺は有理数となって矛盾してしまうからである。
ではcosCが有理数で、−1<cosC<1を満たすとき、自然数解(x、y、z)は存在するであろうか。この論文ではこの問題について考えてみたい。
なお、自然数解が存在するということと、正の有理数解が存在するというのは同値である。なぜなら、有理数解(x、y、z)が存在する場合x、y、zの分母の公倍数をかければ自然数解(x、y、z)にすることができるからである。
しかし、cosCが有理数であれば、x、y、zは必ず有理数であるというわけではない。などいくらでも反例を作ることができるからである。
手がかりを得るために、具体的な数値で考えてみることにしよう。C=60°、90°、120°の場合、すなわちcosC=tとおけばの場合について考えてみよう。(言うまでもないことであるが、C=90°の場合はピタゴラス数になる。)次にそれをヒントに一般的な場合を考えてみよう。
1.
t=1/2の場合
2.
t=0の場合
3.
t=−1/2の場合
4.
t≠1/2,t≠0,−1<t<1の場合
1.C=60°の場合
ここで,
x=z−α,y=z−βとおくと,
これを展開してzについて整理すると,
ここで,のとき,
それぞれの両辺にα+βをかけると,
(α+β)z,(α+β)x,(α+β)yをそれぞれ,z,x,yと置き直すと,
よって,β<0のときは十分大きいαに対して,z>0,x>0,y>0になる。また,β>0のときは十分小さいαに対して,z>0,x>0,y>0となる。
C=60°からzは最大辺ではあり得ない。xが最大辺であると仮定すると,α<0,β>0で,
から十分小さいαに対してを満たし,x,y,zは三角条件を満たしている。yが最大辺であると仮定すると,α>0,β<0で,
を満たし,x,y,zは三角条件を満たしている。
以上から,自然数解は無限に存在することが示された。
いくつかの解を示してみよう。
@
β=1のとき
@ α=−1とすると
z=3,x=3,y=3
これは先ほどの正三角形(x,y,z)=(1,1,1)と同じ解である。
A α=−2とすると
z=7,x=5,y=8
よって,(x,y,z)=(5,8,7)
B α=−3とすると,
z=13,x=7,y=15
よって,(x,y,z)=(7,15,13)
C α=−4とすると,
z=21,x=9,y=24
よって,(x,y,z)=(3,8,7)
D α=−5とすると,
z=31,x=11,y=35
よって,(x,y,z)=(11,35,31)
E α=−6とすると,
z=43,x=13,y=48
よって,(x,y,z)=(13,48,43)
A
β=2のとき
@ α=−1とすると,
z=7,x=8,y=5
よって,(x,y,z)=(8,5,7)
A α=−2とすると,
z=12,x=12,y=12
よって,(x,y,z)=(1,1,1)
B α=−3とすると,
z=19,x=16,y=21
よって,(x,y,z)=(16,21,19)
C α=−4とすると,
z=28,x=20,y=32
よって,(x,y,z)=(5,8,7)
D α=−5とすると,
z=39,x=24,y=45
よって,(x,y,z)=(8,15,13)
E α=−6とすると,
z=52,x=28,y=60
よって,(x,y,z)=(7,15,13)
@
とAは重複があるが,明らかに違う無限系列を作り出している。βの値によって無限系列が異なるので,無限系列は無限種類存在することになる。
2.C=0°の場合
ここで,
x=z−α,y=z−βとおくと,
これを展開してzについて整理すると,
よって,
ここで,とおけば,
nを定数とみた場合少なくとも,
は十分大きいmに対してz>0,x>0,y>0を満たすことは明らかである。
また,であり,x,y,zは三角条件を満たしている。
以上より,ピタゴラス数は無数に存在することが示された。
具体的な値を求めてみよう。
B
n=1のとき
@ m=1とすると
z=5,x=3,y=4
よって,(x,y,z)=(3,4,5)
A m=2とすると
z=13,x=5,y=12
よって,(x,y,z)=(5,12,13)
B m=3とすると,
z=25,x=7,y=24
よって,(x,y,z)=(7,24,25)
C m=4とすると,
z=41,x=9,y=40
よって,(x,y,z)=(9,40,41)
D m=5とすると,
z=61,x=11,y=60
よって,(x,y,z)=(11,60,61)
E m=6とすると,
z=85,x=13,y=84
よって,(x,y,z)=(13,84,85)
C
n=2のとき
@ m=1とすると,
z=10,x=8,y=6
よって,(x,y,z)=(4,3,5)
A m=2とすると,
z=20,x=12,y=16
よって,(x,y,z)=(3,4,5)
B m=3とすると,
z=34,x=16,y=30
よって,(x,y,z)=(8,15,17)
C m=4とすると,
z=52,x=20,y=48
よって,(x,y,z)=(5,12,13)
D m=5とすると,
z=74,x=24,y=70
よって,(x,y,z)=(12,35,37)
E m=6とすると,
z=100,x=28,y=96
よって,(x,y,z)=(7,24,25)
A
とAは重複があるが,明らかに違う無限系列を作り出している。nの値によって無限系列が異なるので,無限系列は無限種類存在することになる。
3.C=120°の場合
ここで,
x=z−α,y=β−zとおくと,
これを展開してzについて整理すると,
これはC=60°の場合と全く同じ式である。
以下の議論もほとんど同じになるが,yの置き方が違っているので若干異なる。
ここで,α+β=0のとき,α=0またはβ=0であるが,β=0とするとy=−zとなり,y,zが正の有理数であるという仮定に反する。α=0とすると,x=zとなりCと底角とする2等辺三角形になるが,これはC=120°に反する。よって,α+β≠0
したがって,
以下方法は2つある。一つは,C=60°の場合を踏襲する方法(T)であり,もう一つは分母α+βが約分によって消えるようにしてやる方法(U)である。
T C=60°の場合を踏襲する方法
それぞれの両辺にα+βをかけると,
A
(α+β)z,(α+β)x,(α+β)yをそれぞれ,z,x,yと置き直すと,
z>0,x>0,y>0の条件からβ>0ならば0<α<β/2であり,β<0ならばβ/2<α<0
したがって,
となり,x,y,zは三角条件を満たしている。β≠0であるので,正の有理数解(x,y,z)は無限に存在することすなわち自然数解(x,y,z)は無限に存在することが示された。
U 分母α+βが約分によって消えるようにしてやる方法
(p,q,rは適当な有理数)とおいて,分母が消えるようにp,q,rの値を決める。Aの式に代入すると,
後半のわり算を実行すると,商がで余りがである。よって,割り切れるための条件は,q=−1,r=0である。このとき,
両辺をp倍して、それぞれを改めてz、x、yとおくと
よって,p>0のときは十分大きいαに対してz>0,x>0,y>0であり、p<0のときは十分小さいαに対してz>0,x>0,y>0である。
また,
より,p>0のときは十分大きいαに対してx+y−z>0であり、p<0のときは十分小さいαに対してx+y−z>0を満たし,x,y,zは三角条件を満たしている。
以上より自然数解(x,y,z)は無限に存在していることが示された。いくつかの解を示してみよう。
D
p=1のとき
@ α=4とすると
z=7,x=3,y=5
よって,(3,5,7)
A α=5とすると
z=13,x=8,y=7
よって,(x,y,z)=(8,7,13)
B α=6とすると,
z=21,x=15,y=9
よって,(x,y,z)=(5,3,7)
C α=7とすると,
z=31,x=24,y=11
よって,(x,y,z)=(24,11,31)
D α=8とすると,
z=43,x=35,y=13
よって,(x,y,z)=(35,13,43)
E α=9とすると,
z=57,x=48,y=15
よって,(x,y,z)=(16,5,19)
E
p=2のとき
@ α=3とすると,
z=21,x=15,y=9
よって,(x,y,z)=(5,3,7)
A α=4とすると,
z=43,x=35,y=13
よって,(x,y,z)=(35,13,43)
B α=5とすると,
z=73,x=63,y=17
よって,(x,y,z)=(63,17,73)
C α=6とすると,
z=111,x=99,y=21
よって,(x,y,z)=(33,7,37)
D α=7とすると,
z=157,x=143,y=25
よって,(x,y,z)=(143,25,157)
E α=8とすると,
z=211,x=195,y=29
よって,(x,y,z)=(195,29,211)
@
Aは重複があるが,明らかに違う無限系列を作り出している。βの値によって無限系列が異なるので,無限系列は無限種類存在することになる。
4.t≠1/2,t≠0,−1<t<1の場合
ここで,
x=z−α,y=z−βとおくと,
これを展開してzについて整理すると,
よって,t≠1/2ならば
A
このような複雑な式からルートが消え,しかも約分によって分母も消えてしまうものなのだろうか?
t=−1/2の場合を手がかかりにしてみよう。
t=−1/2とおくと,
B
U分母α+βが約分によって消えるようにしてやる方法では任意の整数pに対して,
であった。このとき,
これを式Bに代入すると,
魔法のようにルートがはずれ,しかも一方の場合は分母まで消えている!!!
どうやらポイントは,βをαの2次式に置くことにあるようである。
において,
とおいてみよう。さらに,ルートの中をDとおくと,
ここで,
=0
とおくと,
であり,
ここで,
とおくと,
であり,式Cが完全平方になるための条件は,
すなわち,
より,
すなわち,
このとき,
したがって,
よって,一方は
ここで,を代入すると,
x=z−α,y=z−βより
ゆえに,t>0のときは十分小さいαに対して,t<0のときは十分大きいαに対して,z>0,x>0,y>0を満たし,最大辺はzまたはxである。しかも,
|z−x|=|α|<y
したがって,x,y,zは三角条件を満たす。
以上より,正の有理数解(x,y,z)は無限に存在する。すなわち,自然数解(x,y,z)が無限に存在する。
t=1/3,−3/7についていくつかの解を示してみよう。
t=1/3のとき
p=1の場合
@ α=2とすると
z=6,x=4,y=6
よって,(x,y,z)=(2,3,3)
A α=1とすると
z=11,x=10,y=9
よって,(x,y,z)=(10,9,11)
B α=0とすると,
z=18,x=18,y=12
よって,(x,y,z)=(3,2,3)
C α=−1とすると,
z=27,x=28,y=15
よって,(x,y,z)=(28,15,27)
D α=−2とすると,
z=38,x=40,y=18
よって,(x,y,z)=(20,9,19)
E α=−3とすると,
z=51,x=54,y=21
よって,(x,y,z)=(18,7,17)
p=2のとき
@ α=1とすると,
z=3,x=2,y=3
よって,(x,y,z)=(2,3,3)
A α=0とすると,
z=9,x=9,y=6
よって,(x,y,z)=(3,2,3)
B α=−1とすると,
z=19,x=20,y=9
よって,(x,y,z)=(20,9,19)
C α=−2とすると,
z=33,x=35,y=12
よって,(x,y,z)=(35,12,33)
D α=−3とすると,
z=51,x=54,y=15
よって,(x,y,z)=(18,5,17)
E α=−4とすると,
z=73,x=18,y=73
よって,(x,y,z)=(77,29,73)
@Aは重複があるが,明らかに違う無限系列を作り出している。pの値によって無限系列が異なるので,無限系列は無限種類存在することになる。
t=−3/7のとき
p=1とする。
すべての両辺に81をかけて,改めてz,x,yとおくと,
@ α=4とすると,
z=346,x=22,y=336
よって,(x,y,z)=(11,168,173)
A α=5とすると,
z=715,x=310,y=525
よって,(x,y,z)=(62,105,143)
B α=6とすると,
z=1246,x=760,y=714
よって,(x,y,z)=(380,357,623)
超拡大ピタゴラス数問題
a,b,cを有理数とするとき、
は、整数解(自然数解も含む)をもつであろうか。余弦定理における自然数解問題(拡大ピタゴラス数問題)を手がかりに、この問題を考えてみよう。拡大ピタゴラス数では、一つが媒介変数αの一次関数で、他の二つはαの二次関数となった。
そこで、とおいてみよう。すると、
これが、完全平方になるように、
とおく。よって、
ここでとおけば、
また、Aから
すなわち、
よって、ならば
すなわち、
したがって、
ゆえに、
よって、z>0,x>0,y>0(正の有理数)に限定すると、
十分大きいxまたは十分小さいxに対して
を満たすから、
p>0として両辺にをかけて、
よって、でcが平方数ならば
は
の正の有理数解であり、pやxに応じて無限に存在する。そして、の分母の公倍数をかければ、自然数解となるので、自然数解は無限に存在する。
それではいくつかの自然数解を示すことにしよう。
T a=2,b=3,c=1のとき
p=1とすると
@
x=2のとき、(32,17,63)
A
x=3のとき、(48,73,143)
B
x=4のとき、(64,161,255)
C
x=5のとき、(80,281,399)
D
x=6のとき、(96,433,575)
p=2とすると、
@
x=3のとき、(96,433,575)
A
x=4のとき、(128,833,1023)
B
x=5のとき、(160,1361,1599)
C
x=6のとき、(192,2017,2303)
D
x=7のとき、(224,2801,3135)
U a=−2,b=5,c=1のとき
p=1のとき
@
x=2のとき、(32,17,31)
A
x=3のとき、(48,57,111)
B
x=4のとき、(64,129,223)
C
x=5のとき、(80,233,367)
D
x=6のとき、(96,369,543)
p=2のとき、
@
x=1のとき、(32,17,31)
A
x=2のとき、(64,129,223)
B
x=3のとき、(96,369,543)
C
x=4のとき、(128,737,991)
D
x=5のとき、(160,1233,1567)
V a=3,b=−1,c=4のとき、
p=1とすると、
@
x=1のとき、(256,241,606)
A
x=2のとき、(512,1041,2142)
B
x=3のとき、(768,2353,4702)
前ページにおいては、の場合について考えた。このページでは、の場合について考えることにしよう。
の両辺をy≠0としてyで割ると、
ここで、,とおくと、
を仮定しているので、
z>0とすると、
Z,Xを元に戻して、
両辺にyをかけると、
ゆえに、aが平方数ならば適当な自然数x,yについて、zは自然数である。よって、の自然数解は無限に存在する。なお、aが平方数である場合からcも平方数である。
自然数解のいくつかを示してみよう。
a=4,b=12,c=9のとき、
の解は,であり、
@
x=1,y=1のとき、(1,1,5)
A
x=2,y=3のとき、(2,3,13)
B
x=3,y=2のとき、(3,2,12)
C
x=4,y=5のとき、(4,5,23)
を有理数とするとき、
方程式
A
は自然数解をもつか。
特定の条件のとき、自然数解をもたないことは証明されている。特定の条件とは、
n≧3で、のときで、
である。すなわち、有名なフェルマーの定理である。
式Aは常に自然数解をもたないだろうか。n=2のときは、
において、aまたはcが平方数ならば、自然数解が無限に存在することは、すでにこのHP上で証明されている。
n≧3のときはどうであろうか。次の場合、自然数解が無限に存在することは自明である。a,bを自然数とし、
となるときである。この場合、式Aは次のように因数分解される。
よって、(x,y,ax+by)は式Aの自然数解である。x,yは任意の自然数をとることができるので、式Aの自然数解は無限に存在する。
これからの研究課題は、いかなるときに式Aは無限に自然数解をもつのか、またはもたないのかである。
なお、式Aが整数解をもつということと有理数解をもつことは同値である。なぜなら有理数解が存在したとすると、の分母の公倍数mによって、は整数の組であるが、のとき、
の計算からも式Aの解であるからである。
同様にが有理数解のとき、任意の有理数αをかけたも式Aの解である。これらを別の解とすると、解は存在するとすれば常に無限にあることになってしまうので、ここではのとき、解と解を同一解と定義することにする。したがって、異なる解の定義は、となることである。
拡大フェルマー予想
方程式
はn=2の場合を含めある条件下では自然数解を一つも持たない。
T n=2の場合
T n=2(2次)の場合
方程式
はまたはが有理数の平方数であるとき、自然数解を無限にもっていることは、このサイト上ですでに証明されている(超拡大ピタゴラス数問題参照)。よって、方程式が解をもたないための必要条件は、,の両方が有理数の平方数でないことである。では、これで十分であろうか。十分条件でないことは、次の反例から明らかである。
方程式はなど解をもっている。,の両方が有理数の平方数でないのに解をもつ例はこの他いくらでも出すことができる。方程式は、を、方程式は、を解としてもつなど。
方程式が解をもたないための必要十分条件は何なのか。具体的な場合を研究して、手がかりを得ることにしよう。
@
A
B において、の両方が有理数の平方数でないのに、解をもつ条件
C は解が一つ存在するならば、解を無数にもつか。
@ 方程式は自然数解を一つももたないことの証明
自然数解をもつと仮定する。
A)
x,y両方を奇数であるとすると、は奇数である。よって、は無理数となって矛盾する。
B)
一方を奇数、他方を偶数であるとすると、は奇数となり、は無理数となって矛盾する。
C)
両方偶数であるとすると、x,yの最大公約数bによってとおける。このとき、となりは無理数となって矛盾する。
A)B)C)よりは自然数解をもたない。
さらにより、も自然数解をもたない。
A は自然数解をもたないことの証明
方程式が自然数解をもつと仮定する。
A
を変形すると
B
T x、yの両方が奇数である場合
式Aより、zも奇数。そこで、
とおくと、Bより
よって、
の両方が奇数または偶数とすると、が偶数、の一方が奇数で他方が偶数であるとすると、が偶数となり、右辺が奇数であることに反する。
U xが奇数で、yが偶数である場合
Aよりzは偶数である。よって、z+yもz−yも偶数となり、式Bの左辺は4の倍数である。ところが、は奇数で、両辺を2で割ると左辺は偶数、右辺は奇数となって矛盾する。
V xが偶数で、yが奇数である場合
式Aより、zは奇数である。よって、z+yもz−yも偶数となり、式Bの左辺は4の倍数である。ところが、は奇数で、両辺を2で割ると左辺は偶数、右辺は奇数となって矛盾する。
W x、y共に偶数である場合
式Aからzも偶数である。x、y、zの最大公約数をaとし、とおくと、の少なくとも一つは奇数である。式Aに代入して整理すると、
ゆえに、だけ奇数で他は偶数であることはできないから、の少なくとも一方は奇数である。したがって、TUVから矛盾する。
以上TUVWから方程式は自然数解をもたないことが証明された。
B において、の両方が有理数の平方数でないのに、解をもつ条件
A
の両辺をで割り、と置くと、
B
よって、式Aが有理数解をもつことと式Bが有理数解をもつことは同値であるから、式Aが有理数解をもつための必要十分条件は、式Bが有理数をもつことである。すなわち、式Aはが有理数の平方数となるような有理数pが存在するならば、有理数解をすなわち自然数解を持つ。
式Bにp=1を代入すると、
よって、が平方数であるときは、解をもつ。例えば、やときなどである。
,
前者も後者もを解として持つ。前者は、このほか
などを解として持ち、後者もなどを解として持つ。
式Bにp=2を代入すると、
よって、が平方数ならば、式Aは解を持つ。例は、
などである。
それぞれの解を順に一つずつあげると、である。
Aにおける証明から
,,
は正の有理数解を一つも持たないことがわかる。
また、@における証明から
も正の有理数解を持たない。言い換えれば、任意の有理数pに対して、は有理数の平方数にならない、ということである。
C は解を一つ持つとき、解は無数に存在するか。
まず具体的な場合で考えてみよう。
A
は解(x,y,z)=(1,1,3)をもっている。このときわれわれが定義する意味で、異なる解を無数に持っているであろうか。われわれの定義で、二つの解,が異なる条件は
であった。
式Aの両辺をで割り、と置くと、
B
双曲線上Bに有理点(p,q)=(3,1)が存在している。そこで、点(3,1)を通る直線の傾きをtとすると、
C
式Bに代入して整理すると、
解の一つは、p=3である。よって、他の解をβとすると、2次方程式のおける解と係数の関係から、
であるがいずれの場合も、
よって、tが有理数であればβは有理数である。
βをpと置き直して。
式Cに代入して、
tは任意の有理数をとることができるから、方程式Bは解
を無数に持っていることが証明された。
t=1のとき、
(p,q)=(5,3)
このとき、方程式Aの解は
(x,y,z)=(3,1,5)
t=2のとき、
(p,q)=(19/7,3/7)
(x,y,z)=(3,7,19)
t=3/4のとき、
(p,q)=(27,19)
(x,y,z)=(19,1,27)
t=4/5のとき、
(p,q)=(13,9)
(x,y,z)=(9,1,13)
t=8/11のとき、
(p,q)=(395/7,279/7)
(x,y,z)=(279,7,395)
次に一般的に考えてみよう。
B
に解が存在すると仮定しよう。
D
前と同様に点を通り、傾きがtの直線を考えると、
E
式Bに代入して整理すると、
一方の解はなので、他方の解をβとすれば解と係数の関係から
F
G
式Fから
式Gから
これに式Dを代入すれば
よって、式EからもFからも同じものが導かれる。
(ここでは解と係数の関係で解いたが、2次方程式の解の公式に代入しても解ける。そのさい、魔法のようにルートが消えてしまうことを、読者自身で確認していただきたい。)
tが有理数であれば、βは有理数。
よって、任意の有理数tについて、
は方程式の以外の解であり、無数に存在することがわかる。式Eに代入して、
より、
よって、任意の有理数t、yに対して、
はの有理数解である。そして、分母の公倍数をかけるなら自然数解となる。
以上から、方程式は有理数解を一つ持つなら、有理数解(分母の公倍数かけるなら自然数解)を無数に持っていることが証明された。よって、方程式は自然数解を無数に持つか、一つも持たないかのどちらかであるという拡大フェルマー予想は、2次では証明されたことになる。
D を手がかりに自然数解(有理数解)が存在しない場合を探し出す方法
両辺をで割り、z/y=q、x/y=pとおくと
A
ここで、q=p+αとおくと、
すなわち、
この2次方程式の判別式をDとし、D/4=dとおくと、
dが平方数ならAの有理数解が存在してしまうので、
は有理数解を持たない。よって、
は自然数解(有理数解)を一つも持たない。
同様にAにおいて、q=p+2αとおくと、
整理して、
よって
、
したがって、
B
は自然数解を一つも持たない。
式Bにおいて、q=p+αとおくと、
から、
ゆえに、
から、
は自然数解を一つも持たない。
式Aにおいて、q=p+nαとおくと、
すなわち、
よって、
すなわち、
は自然数解を一つも持たない。
nは任意の有理数をとることができるから、解を持たない場合は無限に存在することが証明された。
同様に式Bにおいて、q=p+nαとおくと、
よって、
から
1.
n=2とき、
2.
n=3のとき
3.
n=4のとき、